『エロゲーとわたし』 連載第三回

  2000年3月28日。
 先週、エロゲー四本買っちまったぁ。PSのギャルゲーも一本買ったし駄目駄目な俺。
『夏色剣術小町』『あいたくて』も未だクリアしてないのにぃ。その上こんなに買ってどうするんだろう。

 本当にどうしてこうなってしまったのだろう?
 そもそも、高校の頃まで俺はゲームなんか買わない人間だったのだ。唯一興味があったのは戦争シミュレーションゲームだけ。しかもボードの。だがボードゲームは人数を集めないと出来ない。それが面倒だった。
 で、ファミコンを買って『ファミコンウォーズ』を猿の様にやった。高校の時やった記憶があるコンピューターゲームは、此と『ボンバーマン』だけである。
 そんな俺に大転換をもたらしたのは、何かの雑誌に紹介された『ギャラクシーフォース』と『レジオナルパワー』と言う二つのゲームだった。銀河の覇権を争う戦略シミュレーションゲームという記事を見て、大学三年当時SFファンだった俺の血は、どどーんと燃え上がってしまったのだ。
欲しい欲しい欲しい!! 

 居ても立っても居られない!! こうなったら買うしかない!! 早速同じゼミに居たパソコンに詳しい友人と一緒に秋葉原へ行って、ゲームとマシンを手に入れた。勿論PC98である。
 それからは戦略シミュレーションゲームをプレイしまくった。大戦略に三国志にソロモン海戦で項羽と劉邦、でもプリンセスメーカーにも見事にはまった。女の子は可愛く。着替えさせる時、裸になったりするとドキドキした。ああうぶな事は素晴らしい。そう言えば、あの絵ではアンダーヘアーまできちんと描いてあったなぁ。なんと大らかな時代!! いいじゃないか毛くらい。

 そんなある日、秋葉原を歩いていた俺はエロゲーのコーナーに迷い込んだ。それは運命と言う物だったのかもしれない。で、ひとつのゲームを手にとった。
『ストロベリー大戦略』と言うエロゲー。国を取ると女の子のあんな絵やこんな絵が見られるというのは何かお得な気分で、思わず買ってしまったのだ。
 まぁ、当時の私は単に裸目当てで買うと言うのに抵抗があって、このゲームにしたのかもしれない。男は可愛い女の子の裸には勝てないのだ!! えっへん。
 俺はこのゲームにはまりまくった!! 今から思えば大した事の無いグラフィックだったのだがバーストした!! 忽ち世界を統一し、それでも飽きずにまた統一した。光栄の親父武将達よさようなら。髭と硝煙と鋼鉄の世紀は俺の頭からサラバさらばおさらばさらば!! 今やモニターはあられもない女の子に日夜占拠されたのだ!! ちなみにモザイクは入っていなかった、ふふ、羨ましいだろう。
と言っても女の子のアソコは赤い縦線一本だったけどね。

 まぁそれからはエロゲー道を一直線!! 『バトルスキンパニック』『エイプハンターJ』『ベロンチョ身体検査』『ポニオン』『キサナ』『校内写生』『スロープ』『ばにぃはんたー零』『電撃ナース』『電撃ナース2』『きゃんきゃんバニーシリーズ』『闘神都市』『闘神都市U』『天仙娘々』『エンゲージエランズ』『エル』『秘密の花園』『ポゼッショナー』『星の砂物語』『河原崎家の一族』『YES HG』『クィーン・オブ・デュエリスト』『人形つかい』『ブランマーカー』『電話のベルが・・・』『鬼頭女子刑務所』『同級生』・・・その他色々。ああ走馬燈の様に脳裏を駆け抜けるゲーム達!!
 今から思えば大した事無いグラフィックで、MIDIボードも無かったから音楽も出なかったし、余りにアレなゲームもあって5インチフロッピーを叩き割った事もあったけど、君達との美しい思い出は忘れないよ。アデュー。あの5インチディスクを素早く入れ替える事に命を燃やした日々!! こうして俺はエロゲーにはまり、会社に就職してからも失業中も倦まず弛まずエロゲーを続けた!! 『シヴィライゼーションU』だけが、エロゲーの嵐の中でやった一般ゲームだった。

 で、ある日、失業中の俺がプレイしていたゲームは、当時としては珍しく女の子が主人公のダンジョンアドベンチャーだった。で、エロゲーだから当然女の子がエロイ事をされるのだが、プレイしていてふと思った。
 ここをこうしたらもっと面白くなるのじゃないだろうか? 否、正直に言おう。
ここをこうしたらもっとエロエロで興奮できるのじゃないか?
 俺はまっさらなノートに、改造したストーリーを汚い字で書き付けていった。
家で日比谷図書館で妄想を炸裂させては独りでニマニマと笑う不気味な日々。白い頁はどす黒い欲望と妄想に彩られ、この何の役にも立たない行為に俺は熱中した。書いている間に地下鉄にサリンが撒かれ、日比谷図書館へ通う途中、日比谷駅に群がるマスコミを目撃などもした。世紀末が迫って来た。貯金が底をつきかけてもいた。何か急き立てられる様に、俺は妄想をスパークさせ続けたのだ。
 ついに完成したそれは、失業中の鬱屈を全て叩き付けられて、暗い情念に満ち、正義のヒロインを陵辱の嵐と非人間的な人体改造の運命へと突き落とし、全ての人間性を剥奪すると言う、元のゲームとは似ても似つかぬ物に変貌していたのだ。
ソフ倫の倫理規定なんざ知らない人間が書いたのだから死姦、獣姦なんでもござれだった。怖い物知らずの大暴走と言う奴だ。

 こんな物を書いてしまったからには、他人に見せてやりたいと言う欲望が、むくむくと勃起して来てしまったとしても仕方あるまい!? 勃起とか書いてもなんとも思わなくなった自分に時の流れを知るなぁ。
 同時に書いていた『南北朝時代のSLG企画書』は、応募しようとしていた会社が人材募集を打ちきってしまっていたので闇に消え、ついに俺はエロゲー会社への就職活動に乗り出したのだった。俺は唯一の武器である鬼畜外道なゲーム企画をレポート用紙に清書した。ワープロなんてしゃれた物が無かったので手書きだった。今なら、『レポート用紙20枚にびっしりと手書きの文字(而もとても汚い)が書いてある企画書など誰も見ねぇよ!! こののぼせ上がった物知らずの馬鹿野郎がぁぁっっっ!!』と突っ込みの十発も入れてやる所だが当時の俺は自分の初めて作った創作物の外道な輝きに確信を持っていたのだ。ふふ、この企画書、スカウターで見ればベジータも真っ青の数値だぜ!! と根拠もなく思っていたのだった。救いがたい若さは時として盲目であるのだ。
 だがその時、ストーンヘッズに入ろうとは全く思っても無かったのだった。当時の俺にとって、SM専門と言う看板は、余りに恐ろしくて、ここだけは止めよう、と固く心に誓っていたのだ。だが運命はどうなるか解らない。と言うか、なるようにしかならないと言うべきか・・・・・・・。

 というわけで、今回はここでおしまい。うーむ、まだ就職まで書けなかったとは!! 不覚!!

 では、なるべく近い内に、また書くので、見捨てないでやってください。

BY ストーンヘッズシナリオライター まるちゃん改め丸谷秀人でした。

PS             次回予告!!
         自信を持っていた鬼畜ゲーム企画書。
           だが現実はそんな物を嘲笑う。
    ついに人材募集をしているエロゲー会社で残っているのは
       SM専門ソフトハウスストーンヘッズのみ!!
        嗚呼!! 一失業者の運命や如何に!?
           だが、彼はまだ知らない。
      今、まさに運命の時が訪れようとしている事を・・・
       次回、『就職戦線異状あり!!』ご期待下さい!!

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