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● 『仏蘭西少女開発回想録』 第15回

みなさまこんにちは。

ストーンヘッズディレクターの三ツ矢新です。

7月も終わり、いよいよ夏コミの8月ですね。

さて、その夏コミですが、ストーンヘッズのブースは出ないものの、
絵UN-ZO様より、『仏蘭西少女』『MAID iN HEAVEN SuperS』アイテム
販売されます。

詳細は↓こちらのバナーからのリンク先で参照して下さい。
これらのアイテムとは別に、ウチワも無料配布する予定です。

片面には今回初お披露目となるキャラクターが印刷されていて、
入稿データを見た関係者から
「ストーンヘッズらしからぬ爽やかさだ!」
という意見が続出の絵ですが、ユーザーさんからの反応が今から楽しみです。

ウチワの数はそれほど多くなく、無くなり次第の配布終了となりますので、
絵UN-ZO様のブース「西4階企業ブース NO.563」にぜひぜひお立ち寄り下さい!

というわけで今週も行ってみましょう。

<『仏蘭西少女開発回想録』第15回 2008.8〜2008.11>

2008年、夏。
ここまで『皇涼子のBitchな1日』と『仏蘭西少女』を
平行して開発を進めてきたストーンヘッズ開発室でしたが、
そろそろどちらを先に完成させるか決める必要が出てきました。

外注スタッフはともかくとして、
開発室内部での平行作業はやはり1本に集中するよりは進行のペースは落ちますし、
近い時期にマスターアップが続いてもバランスが悪いので、
二正面作戦に一旦区切りをつけて、各個撃破に切り替えるタイミングだったということですね。

素材の量やシナリオ・分岐のボリュームを考えると結論はそれほど難しくはありませんでした。

当時の『仏蘭西少女』は、シナリオこそ上がっていたものの、
前回までに書いた膨大なグラフィック素材は、まだまだ未消化の状態でした。

発注自体はしてありますが、全て上がってくるのはしばらく先になりそうでしたし、
プログラム方面では『ノベル・アドベンチャー両対応』の処理が、
年内完成の進行だと、やや不安が残るような状況です。

……というわけで、夏コミ以降は
作業が被らないスタッフに関しては引き続き作業を進めてもらい、
あとは『皇涼子のBitchな1日』の方に開発室の力を注ぐことになります。

一方、広報活動の方は引き続き二正面作戦は続きます。
夏コミで『仏蘭西少女』のデモムービーのお披露目も出来、
原画家のTonyさんの力もあってブースは盛況の下、無事夏コミを乗り切ることができました。

……余談ですが、この夏コミ用に書き下ろしてもらった『仏蘭西少女』の水着絵は、
「お祭りなのでゲームのイメージにこだわらず明るいものを」
と頼んだ甲斐あって、今でも「学園仏蘭西少女も悪くねぇよなあ」などと妄想しながら、
ニマニマ眺められる絵で気に入ってます。

それはさておき、リリースペースがそれほど早いわけではないストーンヘッズで、
ここから1年の間にCODEPINKとPILの新作が立て続けに出ますので、
広報的には積極的に出るべき、という雰囲気が当時はありました。

そんな中で出てきたのが「Webラジオをやってみよう!」という提案です。
言いだしっぺは確か金山会長だったと思いますが、内容など具体的なものは現場に丸投げ状態です。

丸投げ、と言っても当時は忙しい中で全体的にテンションが上がってましたから、
「おお、Webラジオですか、いいですね! やりましょうやりましょう」
と目をグルグルさせながらノリで乗っかった記憶はあります。

乗っかったはいいものの、開発室内部にはWebラジオを作ったことのある
スタッフはいなかったので右も左も分からない状況でした。

ただどういう方向性のラジオにしたいか、
というのは金山会長から指令があった瞬間にイメージはできました。

となれば、後は具体的な作り方が分かれば大丈夫!

金山会長から話が出てから、この間1〜2週間でしょうか。
聞くまでまるで作る気がなかったWebラジオがあっという間に現実味を帯びてきて、
今にして思えば、この速さは当時の状況ならでは、という気はします。

その勢いのまま、気が付けば僕は、
『夏めろ』や『SweetHome』の主題歌・BGMでお世話になっていた
SuperSweepさんの電話番号を押していたのでした。

<続く>

『仏蘭西少女』の開発に関して聞いてみたいことがあれば、
下記のメールアドレスまでメールして下さい。

france_info@franceshojo.com

2010/07/30

● 丸谷秀人のつぶやき千里・第30回


 『キャラクターとわたし』

 シナリオを書く時、毎度大変お世話になるのがキャラクター様です。
 今日は、そんな重要極まりないキャラクター様との出会いと別れのお
はなしです。
 なお最初に断っておきますが、以下には大量のタワゴトが含まれてい
る上に、ごくごく個人的なものに過ぎません。他のエロゲシナリオライ
ターの方々がどうやっているかは知りません。ここだけの話、知り合い
のエロゲライターなんてほとんどいません。人間力が低いので人脈が作
れないのです。ですから一般的なエロゲシナリオライターがどうしてい
るかを考えるにあたっての参考にはなりません。つまり全てタワゴトと
思って読むか、この辺りで読むのを止めて、有意義な事(何をしてもこ
の文章を読むよりは有意義でありましょう)に時間を割く事をお勧めす
る次第です。あしからず。

 さて、彼ら彼女らとは、企画が動き出した時点からのおつきあいにな
るわけですが、この出会いにも色々とあります。
 卵が先かニワトリが先かなんて言葉がありますが、キャラデザが先か
キャラ設定(+世界観)が先か、と聞かれれば、どちらの場合もあるとお
答えしましょう。
 仕事を受けるかどうしようか迷いながら先方の事務所へ行ったら、い
きなりキャラデザを見せられて、余りのかわいさに、気づいたら仕事を
受ける事になっていたいわゆる孔明の罠の時もありました。キリヤマ大
先生と組む場合もおおむねそんな感じです(ちなみに孔明の罠ってわけ
じゃありませんよ)。逆におふらんすの時は、まずキャラ設定で、次が
キャラデザでした、しかも原画家様が何回か変更になってそのたんびに
キャラデザが変わったりもしました。今となっては懐かしいです。
 で、どれがやりやすいか、と問われれば、キャラデザが先にあった方
がやりやすいと申せましょう。キャラデザがかわいければ、それだけで
やる気が湧くってものです。やる気の中には当然『おぜぜのにおいがす
る』という要素もあります。SFは絵という言葉が昔あったと言います
が、エロゲも絵の良し悪しは大きいですからね。まぁおぜぜうんぬんに
関して考えるようになったのはフリーになってからで、それまでの自分
はエロゲ製作に対して純粋だったなぁと行く年来る年を振り返りさびし
げに笑うのでした。

 さて、気を取り直して。
 こうして彼ら彼女らと出会ったわけですが、当然の事ながら数枚のキ
ャラデザがあったり(全く無い場合もあります)、おおざっぱな設定が
あるだけでは、キャラクター様は動き出してくれません。うつろな目を
して立っているだけで、うんともすんとも話してくれないのです。
 彼ら彼女らにある程度自発的に動き出してもらうには、設定の細部を
つめていく必要が出て来ます。特に彼ら彼女らの行動原理の設定こそが、
キャラ設定の肝では無いかと私は思っております。
 行動原理とは何かといえば、彼ら彼女らが行動する時、どういう風な
傾向の思考をしてそれに基づいてどう行動するかということです。これ
を一貫させないと、キャラとして成立しません。
 まぁ声優さん達が名演技をしてくれれば――というかディレクターの
方々が選んでくださる声優さん方は大抵名演技をしてくれますので――
その場その場のプロット上の要請にのみ従うかなりいい加減でいきあた
りばったりなキャラをライターがでっちあげてもそれなりに成り立って
しまうのですが、そんなキャラを書いても楽しくないし、キャラは死ん
だ魚の目をしているだろうから逢いたくないし、なにより個人的にそう
いうキャラが書けないのです。なんだか死んだ魚の目をしたキャラが書
けないと言いますと、生き生きしたキャラをいつも書いているみたいで
なんだかいいことみたいですが、ちょっと意味が違います。
 いい意味で、キャラクターを完全に操り自らの持つテーマをプレイヤ
ーの方々に提示するタイプのライター様方は多数おられます。が、どう
も私にはそういうのが書けません。私はいつも、キャラクター様達の動
きについて行くのがやっとで、最後に『なんとか今回も書けた……』と
ほっとする、ばかりなのです。コントロールが出来ないのです。猛獣を
後ろから追いかけてばかりの猛獣使いなんて、使えない奴の代名詞です。
 でも、使えない奴というレッテルを貼られてもこうするしかないので
す。私にはキャラクター様を思い通りに操って『どうや! 自分はこの
ゲームでこういう事を訴えたいんじゃ!』という事を伝えたくても、そ
もそも伝えたいものがないのです。ですからシナリオを書きあげるのに
は、キャラクター様の自発的行動がないと書けないのです。本当にいつ
もありがとう御座います。
 そんな私がつきあってきたキャラクター様達は、結構融通が利かない
人達で、みな、行動原理が揺らがないキャラばっかりでした。もうちっ
と言うこと聞いてくれよ! と泣きたくなる事もしばしばでした。
 もちろん、その行動原理自体が変化することがシナリオ上の重要なギ
ミックになる場合もあるわけですが、それも、彼ら彼女らが納得する変
化でなければならないのです。

 さて、先程から気色悪いタワゴトが増えてまいりました。キャラクタ
ーの自発的行動だの、キャラクターの納得が必要だのと書くと、妄想と
話している危ない人みたいですし、自分でもしばしばそういう気がして
人間的に廃人だなと思うのですが、実際そう感じるのだから仕方ありま
せん。それに、こちらの書く事に彼ら彼女らが納得しにくくなっていく
のは社会の良識的に見れば精神に危険な傾向でも、三文エロゲシナリオ
ライターである私としては良い傾向なのです。なぜなら、イエス・ノー
の意志を示し始めてくれたという事は彼ら彼女らの人格が確立して来た
印だからです。
 さて、こういう風に書いていると、私がキャラ設定ばかりやって世界
観設定は大して重視していないみたいですがそんな事はありません。私
が複雑な世界観を作れない可哀想な人であるというのは認めるにやぶさ
かでないですが、その程度の私でもキャラ設定と世界観設定は切り離せ
ないものなのです。キャラクターはみなその世界で生きている以上、そ
の世界から影響を受けざるを得ないからです。キャラ設定が変化すれば
当然世界観も影響を受け、世界観が変化すればキャラ設定も変化するの
は避けられません。これは卵が先かニワトリが先かの世界で、どっちも
重視しているつもりです。出来ているかは判りませんが。
 世界観も広い意味でキャラ設定なのかもしれないなーなんて、思って
みたりして。
 こうしてキャラクター様と世界観設定の相互作用と、妄想ちゃうキャ
ラクター様達と脳内で会話しているキモイ状態が始まります。色々な
状況に彼ら彼女らを放り込み、どういう風な行動やどういう台詞を言う
かが、自然と判るようになって来たらしめたものです。
 夜明けは近いぜよ。
 
 ひとこと言っておきますと、これらは全てタワゴトです。彼ら彼女ら
はあくまでもわたしの脳内存在に過ぎません。人格もなければなんにも
ありません。全てをわたしが操っているのです。残念ながら、そんなこ
とは百も承知な程度には正気なんです。
 ですがそれでも、シナリオを書いている間中、彼ら彼女らと一緒に旅
をしているという実感があります。わたしは横暴極まりない創造主であ
るはずなのに、彼ら彼女らの行動をかたわらで見ている観察者で記録者
でもあるのです。
 
 さて、こうしてわたしはキャラクター様達と出会い、自分の意志で歩
き喋ってくれるようになった彼ら彼女らと一緒に、数ヶ月にわたる旅の
準備を終えました。
 
 次回は、旅の始まりから終わりまでを語りたいと思います。


2010/07/23

● 『仏蘭西少女開発回想録』 第14回

みなさまこんにちは。

ストーンヘッズディレクターの三ツ矢新です。

7月も中旬になり、すっかり夏ですねえ。
夏と言えば夏コミですが、
今年のストーンヘッズはブースは出しませんが、
関連アイテムは出そうな模様です。

まだ詳細を告知できる段階ではないですが、
準備が整い次第、何かしらアナウンスはしたいと思います。

そんなわけで今週も行ってみましょう。

<『仏蘭西少女開発回想録』第14回 2008.1〜2008.08>

何かと素材の足りない『仏蘭西少女』でしたが、
吉田さんや大石さんの協力の下、
背景・イメージCGは何とかなりそうな感じになってきました。

一方、それ以上に大事な素材の仕事も並行して行っていました。
Tonyさんのイベント原画ですね。

時期は少し戻って2008年の年始です。
この時僕は初めてTonyさんと会って話をしました。
この時諸事情があってまだ原画は全て上がっていませんでしたが、
他のスタッフの時と同様、
「これまでのことは僕も詳しい事情はよく知らないので、
 特に何も言いません。
 これから完成させる為に必要なことだけ考えて作業しましょう」
というような内容のことを話しました。

それから週に2回、都内某所にあるTonyさんの事務所に足を運び、
進捗の確認と、発注原画の調整を行うことにしました。

原画を描いてもらうのに、そんなに頻繁に行かないといけないものなのか?
とお思いの方もいるでしょうが、まず一つあるのが、
進行が押している作家さんにモノを上げてもらう際には頻繁に顔を出して催促する、
というのは大基本です。

これはTonyさんに限らずキリヤマ隊長の時も似たようなことをします。
キリヤマ隊長の場合は社内にカンヅメ状態になってもらって、
一日数回様子を見たりしてましたが、今回はそういうわけにもいきませんでした。

今回の場合はもう一つ理由がありました。
以前この回想録にも書いた通り、
年始から春にかけてシナリオを読みこんで、必要な素材を洗い出したのですが、
足りないのは背景やイメージCGに限らず、イベントCGもそうでした。

当時は前任者が作った発注原画のコンテがあったのですが、
そこにあるカットを何度眺めても足りない絵があったんですね。

事情を知るのは丸谷先生くらいだったので、
「このシーンどうするんですか? 絵無いじゃないですか」
と聞いても、
「原画の数に限りがあるんだから仕方ない」
細かいニュアンスは忘れましたが、内容的にはこんな感じの返事でした。

その理屈は分かるんだけど、それでは解決にならないので、
何とか具体的な落とし所を探るために、
僕が直接Tonyさんの事務所へ足を運んで打ち合わせをする必要があったんですね。

この打ち合わせの内容を要約すると、
  • 出来る出来ないは置いておいて、必要な絵を全て出してみる。
  • その上で前述のコンテは一旦忘れて優先順位をつける。
  • Tonyさんの原画の上がり状況を踏まえて、
    その都度全体の進行の微調整をする。
という感じでした。

こうして書いてしまうと簡単そうなんですが、
実際の調整は難航しました。

というのも、今まで上がっている原画に描かれているキャラに偏りがあったため、
(端的に言うと少女の絵が多くて、香純と舞子の絵が少なかった)
単純に「ゲームに必要な原画」を並べると、今度はキャラのバランスが悪くなったり
するものですから、一種のパズルみたいなものです。

中には既に上がってる絵よりも優先順位の高いカットがあったりして、その度に
「なぜこんなものを先に書いてもらったんだああああああ!」
という心の叫びを上げたものですが、今叫んだところで何の解決にもなりません。

さらに輪をかけて大変だったのが差分の指定です。
馬鹿正直に発注すると、300枚原画があっても足りないような
シナリオ量(とシーン数)でしたから、ある程度は差分を使って効率的に使わないといけない。

この場合「効率的に使う=複数の異なるシーンで同じ原画のカットを使う」ということです。
こうした使い方をする際に気をつけないといけないのが、服装やロケーションですね。

ポーズや構図的に使い回しが利きそうでも、服装が微妙に違ったりするので、
その場合は差分を正確に調べ上げて指定しないと大変なことになります。

基本的にPILの作品はただでさえ通常のタイトルより差分が多くなるんですね。
SMですから、傷跡やロウの跡とか血とか、そういうものですね。
さらに時代物……というよりは丸谷シナリオの設定の細かさがあって、
「このフレーズさえなければ……っ!!」
と歯噛みをした記憶がいくつかありました。

とはいえシナリオにも流れがありますので、
「ここ政重が服着てる絵しかないので服着せて下さい」
みたいなリテイクは出し難いんですね。
どう考えても不自然なケースがありますから。

……それでも最終的にいくつかシナリオを直してもらいましたが。

こうしたゲームに必要なイベント原画を書いてもらうのと同時に、
商売ですから販促活動も行わないといけないので、
雑誌の特集用の描き下ろしや、夏コミの描き下ろしもお願いしたりしました。

そんなわけで、2008年の前半をかけて行ったイベントCGに関する打ち合わせを経て
この調子で進めれば大怪我はしないかな、という感触を掴んだ頃には、
もうすっかり季節は夏になっていました。

そしてこの時期、ストーンヘッズ開発室は1つの大きな決断を迫られていたのでした……

<続く>

『仏蘭西少女』の開発に関して聞いてみたいことがあれば、
下記のメールアドレスまでメールして下さい。

france_info@franceshojo.com

2010/07/16

● 『仏蘭西少女開発回想録』 第13回

みなさまこんにちは。
ストーンヘッズディレクターの三ツ矢新です。

もう7月ですか。夏ですね。
夏と言えば冷房。

今、僕の席直撃地帯なんですよ。
やばいくらい寒いです。
とはいえ止めちゃうと体温とPCの熱で一気に熱帯になるのが開発室。
さらに直撃じゃないところはちょうどイイ感じみたいなので、
長袖・ひざ掛け毛布で乗り切ろうと思います。

というわけで、今週もさっそく行ってみたいと思います。

<『仏蘭西少女開発回想録』第13回 2008.5〜2008.08>

軽井沢で金山会長からシナリオを一切カットしない
「全ツッパで」という言葉をもらった僕は、
予定を変更することなく開発を進めます。

今回は前回あまり書けなかった大石竜子さんの話をしようと思います。

基本的に大石さんとのやりとりは、それほど苦労がなかったというか、
すんなり進んだ印象があります。

大石さんから色よい返事をメールでもらってすぐに、
初顔合わせの打ち合わせをセッティングしました。

丸谷先生、大石さん、三ツ矢の3名で打ち合わせをしたんですが、
元々この企画に関心があったという大石さん、丸谷先生と波長が合ってる感じでした。

基本的にイメージCGというのはカタチがはっきりしないだけに、説明しにくいです。
どうしても曖昧な表現になってしまう。

なので、こちらの求めているものがちゃんと伝わるかどうか不安ではあったんですが、
いざ話してみると、大石さんは丸谷先生の喋るイメージにちゃんと付いていけているようで、
一つ説明すると、
「ああ、じゃあそれは例えばこういう風にして……」
とその場で資料を広げながら具体的なアイデアが返ってくる。

丸谷先生は丸谷先生で、その資料そのものに食いついてきて、
大石さんもさらにその話題に乗っかり、みるみるうちに話が逸れていったものでした。

この時点で、丸谷先生と大石さんの間に、
何かしら共通のイメージがありそうな……有体に言えば趣味が近い
ことが掴めたので、これは大丈夫だろう、ということで話はトントン拍子に先に進みます。

取りあえず『仏蘭西少女』シナリオファイルを送って、
後日実際に描いてもらうカットの字コンテを……という約束して
最初の打ち合わせが終わったんですが、
それから1週間経つか経たないかのうちに、早くも大石さんからイメージラフが上がってきます。

それはこんな絵でした。


字コンテをもらう前にシナリオを読んで、
大石さんが自主的に描いてもらったイメージカットなんですが、
これらを見た僕と丸谷先生は、
「そうそう! こうゆうのだよこうゆうの!」
と二人して目を輝かせたものです。

話してみてある程度の手ごたえはあったものの、
やはりカタチになったものを見るまでは、少なからず不安は消えないものですし、
この手のものはある種「出来るか出来ないか」みたいなものですので、
多分にセンスに拠る所が大きいカットです。

それが、見事に抽象的なイメージが具体的なモノとして目の前に現れたわけですから、
これはもう言いようのない気分でした。

……さて、背景は吉田誠治さん、イメージ画は大石竜子さん、ということで、
これらに関してはある程度計算が立ちました。

残るは、まだ結構な量のカット数が残っていたTonyさんです。

<続く>

『仏蘭西少女』の開発に関して聞いてみたいことがあれば、
下記のメールアドレスまでメールして下さい。

france_info@franceshojo.com

2010/07/09

● 『仏蘭西少女開発回想録』 第12回

みなさまこんにちは。
ストーンヘッズディレクターの三ツ矢新です。

蒸しますね。
このくらい蒸すと事務所に着いた時点でシャツが汗だくになります。
中は中で最近冷房がかかるようになって非常に寒い。
最近は長袖をバッグに忍ばせて、汗が引いたらすぐそれに着替えることで何とか対応しています。

そんなわけで今週もさっそく行ってみましょう。

<『仏蘭西少女開発回想録』第12回 2008.3〜2008.05>

丸谷先生からイラストレーターの大石竜子さんの名前を聞き出した僕は、
その日のうちに大石さんの連絡先を突き止め、メールします。

数日後、大石さんから帰ってきたメールは非常に前向きなものでした。
どうもこの『仏蘭西少女』の企画の世界観に非常に興味がある、とのこと。

余談ですが、今回の『仏蘭西少女』の仕事は、
この大石さんに限らず、音楽担当のヤヅチスエタさん、主題歌作詞・歌担当のKILAさん等々、
「このシナリオ・企画だからやりたい」
と言ってくれる人が多く、スタッフを集める側としては非常に楽させてもらった部分が少なくありません。

そういう気持ちで仕事を請けてくれる場合、こちらも当然悪い気はしないものです。
前向きな返事のメールを貰うたびに僕のモチベーションもひっそりと上がっていきます。
これもある種の丸谷シナリオ効果というものでしょうか。

さて、これまでも書いてきた通り、
2008年からの『仏蘭西少女』の開発は、
「グラフィック素材をいかに集めるか」
という問題との闘いでした。

何しろ6MB超のシナリオが「もう出来あがった状態」でそこにあるのです。

読者の方の中には「短くすればいいじゃない」と思う方もおられると思いますが、
当然、開発の選択肢の中にはそれはありました。

しかし、2008年前半にシナリオを読んだ後の僕の感想は
「無理! ……というかそっちの方が時間がかかる」
というものでした。

というのも、6MB超のシナリオの中には、
蜘蛛の巣のように張り巡らされた丸谷先生十八番の「無限分岐」が仕込まれており、
2008年春の段階ではそのフローチャートは作成中……
つまり誰もこのゲームの分岐の正確なカタチは分からない状況です。

「無限分岐を把握し、整理し、削って再構成する」のと、
「馬鹿正直に現在のシナリオ上で必要と思われる素材を出来る限り作る」のと、
どちらが出来そうか……僕のイメージでは断然後者でした。

ただ素材を作るのも当然それなりの予算と時間がかかるし、
その作戦では、前回お話ししたイメージ的なカット以外にも、
現時点でさえ遅れているイベントCG……イコールTonyさんの絵がさらに必要になる、
ということでもあり、事実Tonyさん側との打ち合わせ上では、
「完成させる為には、シナリオを削ることも視野に入れた方がいいんではないか?」
という話が上がったこともあります。

僕の中では削らない方が完成させられる確率は高いという思いがありましたが、
逆に一人だけそう思っていても仕方ないところもあります。

外注の方々とは、丁寧に交渉すれば落ち着くところには落ち着くので、
取りあえずはストーンヘッズ側としてのスタンスを決める必要があるな、
と思い至りました。

ということで、僕は2008年4月某日、
僕は再度軽井沢まで足を運び、金山会長にお伺いを立てることにしました。

例の広すぎる屋敷(第8回参照)の客間で、金山会長に一通り事情を説明し、
僕は黙って会長の返事を待ちます。

シナリオを減らして完成させるか、
現状のままでシナリオに合わせた素材を可能な限り集めて完成させるか……

金山会長は目を瞑って、すくっ、と立ちあがり、僕から背を向けました。
葉巻きに火を付けたのか、会長の肩の上辺りにうっすらと紫煙が立ち上ります。

「あの、会長……?」
「……全ツッパ(注1)で」
「全……ツッパ、ですか」
「全ツッパで」

会長はそれきり一言も喋りませんでした。

全ツッパ……即ち、1行たりともシナリオは削らない。

恐らくそれが唯一の完成させる方法だと思っていた僕は、
ホッとしたのと同時に、これから待ち受ける長く険しい道のりに、
改めて身が引き締まる思いをしたものです。

<続く>

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(注1) 【全ツッパ……】
 麻雀、及びギャンブル用語。
 麻雀では相手の待ち牌などは一切考慮せず、
 全て自分の都合でいらない牌を捨てていく戦法。

脚注by 仏蘭西少女記録委員会

2010/07/02

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